放置感想1台目 ポリゴン・ピクチュアズ版『Levius』と『Fairy gone』 前編

（ブログ文再開の為の放置感想が数多書き出す前に放置されているが、『フェアリーゴーン』奮闘の読み取られなさがあまりにも不憫に思えたので、今回の題目で漕ぎ出すことにした）

■知人のアニメファンに（原作）漫画や推しのアニメを勧めて、読んでもらったり観てもらうところまで持っていくことは思いの外難しいことである（物理的に押し付けることが困難なSNS上の知人なら尚更だ）。

殊に、中田春彌の漫画『Levius』は形式上の特徴「横書き台詞の左開きのバンド・デシネのスタイル」を言ったところで、逆読み漫画の小賢しいだけのやつとか思われてしまうのではないか…

（アラサーの）アニメファンに『Levius』の魅力を伝わるように書くとしたら、『スチームボーイ』では描ききれなかった蒸気機関の特異点の先を、水島精二版『鋼の錬金術師』の現実との接点の手触りを交えながら、蒸気のように黄昏に消えていく文化をビジュアルで背負った闘技者達のドキュメンタリーが精緻で残酷で情熱を持って描かれた漫画、という感じでしょうか…⁉︎

□自分が中田先生の『Levius』を読むきっかけとなったのは、ポリゴン・ピクチュアズ版『Levius』のNetflix配信告知と中田先生キャラクター原案P.A.WORKS制作の『Fairy gone』放送が重なっていて、中田先生の作品は当時知らなかったが『フェアリーゴーン』でP.A.がわざわざ渋いキャラクター原案を選んだ理由が気になって『Levius』を読むことになった。

漫画『Levius』連載のウルトラジャンプを購読してたが未読で（ウルジャンは紙魚丸先生の『惰性67パーセント』がメインで購読してた…）改めて読み出すと、『銃夢』のガリィ然したA.J.というヒロインが主人公レビウスの闘技の為に体内の生命維持装置を差し出していた（『Levius/est』7巻　Chapter.39）ところであり、エンジニアがセコンドとして絡む本格的な『メガロボクス』だなというのが第一印象だった（漫画の機関拳闘≠ボクシングと気付くのはポリピク版『Levius』視聴後だった）。『Levius』アニメ化に合わせ、ウルジャン移籍前の小学館「月刊IKKI」で連載されていた分が新装版として発売され、まとまったかたちで読めるようになり、『スチームボーイ』で失望したスチームパンクに新鮮な興味を刻むことになった。

■漫画『Levius』の概要が掴めてきたなかで、改めて『フェアリーゴーン』の中田先生要素を探っていくと、妖精の力を使った大戦後の世界は『Levius』の蒸気機関の革新が進んだ大戦後の世界と状況的に似た部分があり、マーリヤとヴェロニカの過去描写の段階的な細かさは『Levius』の各登場人物の時系列と蒸気機関との関わりでの身体変化をきっちり描くことで垣間見えるドラマ、に近づこうとした痕跡かもしれない。CG造型の妖精もポリピク版よりもリソースが厳しそうな中、中田画の特徴を掴んだものとなっており、スタジオイースターの美術で精緻な印象を補強する等、中田漫画の印象にどれだけTVアニメーションで近付けれるかがP.A.の制作テーマにあったのではないか。

□中田画に近づこうとする努力と、十文字青の初アニメ脚本の手探り感に振り回される『フェアリーゴーン』が2シーズン目に突入した頃、11月末配信のポリピク版『Levius』のPVが公開されて謎女ショックを食らってしまう…

謎女（なぞめ）という覆面アーティストとA.J.のミステリアスさを推すプロモーションなんだろうけど、謎の女（早見沙織）〉A.J.ラングドン（早見沙織）の歪んだ推し方に猜疑心がah…ah…ah…

謎女が前に出ることでA.J.の『銃夢』性が見事に脱色されて、不用意なパクリ文句対策なんだろうか（適度に過剰なオマージュが決まったものが好きな自分には耐えられない…）

色々問題がある謎の謎女推し、漫画『Levius』における謎女はレビウス母だよなということを再確認できたし、ポリピク版EDの「child dancer」が中田春彌描き下ろしイラストで漫画『Levius』のモチーフの一つであろう映画『ミリオンダラーベイビー』感（それでも安楽に抗うレビウス達）を掬い上げてるのは評価してます…

■ポリピク版『Levius』は漫画『levius』の機関拳闘を中田先生監修のもと、ボクシングのレギュレーション段階のGrade3に限定したものになっている。漫画のレギュレーションGrade2メインで描こうとすれば、ボクシングではなく小西賢一や中村豊の画で闘うことになってしまうのは明らかなので仕方ない…⁉︎

蒸気機関の革新もグレードが下がり、蒸気機関ヘリや歪に進化した延命装置が出てこないので、悪役拳闘士ヒューゴの体を張って見せた蒸気機関の新世界がポリピク版だと大分オミットされてしまっている。（後半に続く）