放置感想8台目 『フラ・フラダンス』公開前雑感

■2021年初夏公開予定の長編アニメ映画『フラ・フラダンス』の事前情報からあれこれ考えたものを書き留めておく。

□『フラ・フラダンス』は水島精二「総監督」綿田慎也監督の座組で、福島県いわき市スパリゾートハワイアンズを舞台にした、フラガールのお仕事青春ストーリー。2011年東日本大震災の、フジテレビによる支援活動「ずっとおうえん。プロジェクト」のアニメ制作プロジェクト3作品の一本である。

■総監督・監督の二本柱といえば河森正治総監督 渡辺信一郎監督の『マクロスプラス』がぱっと思い浮かぶが、『フラ・フラダンス』の綿田監督は他作品で『プラス』のオマージュを度々繰り出しており、座組でのオマージュをも達成するのは感慨深いものがある… 綿田監督独自の演出アクセントである「頭突き合い」が繰り出されるシーンにも期待しています。

□『フラ・フラダンス』の制作経緯的に水島精二作品の『UN-GO』(2011年制作、フジテレビのノイタミナ放送)は切り離せないもので、『UN-GO』で描かれる未来の戦後の事件には、東日本大震災の渦中と以降の生活が重なるものとして描かれていた。奇しくもコロナ禍で震災以降の観光地を描くことになってしまったが、制作に携わっている各方面の息災を願いつつ、自身も公開当日を無事見届けられるよう気をつけたい。

■『フラ・フラダンス』の元ネタの一つである、李相日監督の『フラガール』をネトフリで観たが、1960年台の高度経済成長下のエネルギー資源転換の余波の中で、炭鉱地が観光地に変わる様が、フラダンスの肉体的言語を獲得していく炭鉱地の女性たちの葛藤と交差することで、劇的なものとして印象に残った。東北の地にハワイを作る、炭鉱地にとって天変地異の発想ともいえるものを、経済成長下のリゾート幻想の強さで押し切るのを令和の不景気コロナ禍で見るズレも強烈なものだ。リゾート幻想が日々儚いものとなっていくなかで、仕事としてリゾート気分をフラダンスで生み出していくフラガール達を『フラ・フラダンス』で如何に描いていくか。吉田玲子のシナリオの見せ方に期待するところだ。

□『シャンバラを往くもの』以来の音楽:大島ミチルというのも相まって、姉の道程を追う妹、フラダンスという「手話」、フラダンスの「せんせい」に水島版『鋼』の文脈が強く喚起されるのであった。キービジュアルの夏凪日羽とひまわりは、まさに「太陽に挑む者」だ。

■キャラクターデザイン:やぐちひろこ的に『BEATLESS』からの雪辱をBNピクチャーズの制作体制で果たせるかは、昨年のBNピクチャーズ・サンライズの劇場公開バブルもあって不安なところはあるものの… フラダンスはCGキャラメインらしいが、(初代アイカツ!OP2ジョニー先生ダンスパートを担当した)中村豊による迫真のソロダンスパートはワンチャン期待したいのであった(ハワイアンリゾート創業者が同名の中村豊なので)。