放置感想9台目 アニメ10選から零れた雑感2020

■2020年のTVアニメは、世代交代を意識できる作品が多かった(10選も何かと親子ものが多かった)。南川達馬監督『波よ聞いてくれ』や徳田大貴監督『戦翼のシグルドリーヴァ』の初監督作品、古賀一臣監督『彼女、お借りします』や清水久敏監督『体操ザムライ』の満を持しての監督作品を楽しむことができた。

□清水久敏監督の『体操ザムライ』は『交響詩エウレカセブン ハイエボリューション1』の制作過程でオミットされた「エウレカセブンらしさ(サブカル共同体方面)」を2002年〜2003年の東京を舞台に再構築した手触り。年代的に京田知己監督の『エウレカセブン』前夜であり、清水監督にとってはビィートレインからアニメ制作キャリアが始動する時期だ。OPや謎に身体能力が高いレオの流浪の雰囲気は、清水監督が各話コンテ演出で参加した真下耕一監督ビィートレイン制作の『エル・カザド』を原点とするのかもしれない。あおきえい監督『ID : INVADED』での真下耕一リバイバルを副監督として支えた久保田雄大が、『体操ザムライ』でEDと体操演出で関わることになるのも何かしらの縁を感じる。

■『D4DJ First Mix』8話まで。1クール深夜アイドルアニメらしからぬ、まったりでミニマムなDJ活動のなかに「ものづくり」の手ごたえを感じるのは、水島精二監督の『大江戸ロケット』(放送から13年…)の「ものづくり」を『楽園追放』や『ひらがな男子』(壮絶低予算カルトCGアニメ映画だがVTuberの「だいじょうぶだぁ」というべきコント+音楽番組としては手堅いものがあった)を経て、サンジゲンの現場で落とし込めてるのだなと。『大江戸』の清吉とおソラさんをハピアラな女子高生(真秀とりんく)にMixする雑破業の脚本、本筋が『大江戸』と相似するがアニメ制作が「ものづくり」どころではなかった『BEATLESS』シリーズ構成脚本で発揮しきれなかったものが迸る。そして「ものづくり」と女子高生描写も中途半端になってしまった『大江戸』副監督である長崎健司監督『Classroom⭐︎Crisis』の5年越しの師としての回答が『D4DJ』のフェティッシュにある(ただ「ものづくり」からはみ出してしまった闇い情念を描くのも『大江戸』のテーマのひとつで、『クラ⭐︎クラ』でのナギサ重点の構成や次作『僕のヒーローアカデミア』の趣向からして、長崎監督が選び取った『大江戸』らしさは闇い情念にあるということなのかも)。