放置感想11台目 『装甲娘戦機』の渇望と『ウマ娘 Season2』への失望

元永慶太郎監督の最新作『装甲娘戦機』は、1990年代のジュブナイルSFアニメのテイストでおとぼけとハードなサバイバルをしつつ、キャラバンを伴う装甲娘の描写は元永監督の『ヨルムンガンド』の後継作といっていい仕上がりだ。ラブライブ感あるヒロイン達がキャラバンでサバイブする珍妙さは、むとうやすゆき脚本の『ローリング⭐︎ガールズ』(けいおんの娘にキャラバンさせた)の頃よりぐっとくるものがある。

■『装甲娘戦機』の主人公リコが所属することになる装甲娘のキャラバンは、それぞれが異世界からやってきて装甲娘としての運用を淡々と遂行する、不条理を合理でねじ伏せるものとして描かれる。とはいえ彼女達はLBXではなく生身の女の子なので、食事と憩いを欲するし同士と語らいたくなる。オタクロス登場の4話は、リコが渇望した修学旅行の一連の流れである温泉宿に過酷な世界の中ありつくことができ、メンバーそれぞれが渇望を満たす中、互いの距離が近づく。湯気隠しを逆手に取った縦横無尽すぎるお風呂描写が彼女達の渇望を現前させて素晴らしい。

□焦土の異世界の日本の旅を、美術背景リソースの融通が10年前と比べて貧弱になったTVアニメで魅力的に見せるのは、大胆なシンボル化と導線構築の繊細さが必要になることを元永監督は作品で示してくれる。キャラバンのAI搭載装甲車ネイトの大型設定を生かした操縦室兼寝床の彼女達の立ち位置や、ネイトの側でのランチタイムの違和感が目で楽しいのはありがたいことだ。6話の移動戦闘は『ヨルムンガンド』各話と遜色のない仕上がりだが、改めてネトフリで『ヨルムンガンド』見てたら分割2クールアニメとはいえ世界を股にかけながら(膨大な描き下ろし美術背景が伴う)の毎回戦闘隙あらばカーチェイス銃撃戦をねじ込むストロングスタイルに慄くのであった。

■『ウマ娘 プリティダービー Season2』は1期のスペシャルウィークサイレンススズカのドラマで逃げ切った代償をトウカイテイオーに「おさがり」させてしまう愚行が罷り通ってしまった。毎回、ウマ娘たち顔見せの他レース描写を入れる為に、テイオーの走りの導線は散漫にならざるを得ないし、1期の美術リソースを使い回せるようなシナリオの組み方を奨励する学園所属設定がかなり息苦しい。一期最終回でトレーナーさんが失踪して、NOMADとして地方競馬から成り上がるやつが正直みたかった…