放置感想23台目 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』

村瀬修功監督『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は作品の成り立ちの仕組みの深さ(一年戦争グリプス戦役の総括『逆襲のシャア』の富野由悠季書き下ろし小説による後日談…とガンダム者がとりとめのない解説地獄に陥るアレ)を、若者たちの黄昏(ヴァケイション)の陰影に落とし込み「おしゃれ」な観光サスペンス映画として堂々とした奴なのだなと呟かずにはいられない。

■『機動戦士ガンダムNT』のどん詰まりの疲弊感(そんなアニメ制作の現場の正直な気分の顕在は嫌いになれなかった)を出し惜しみのないベテラン作画パワーとロケーションとコンポジット(撮影)で覆す『閃光のハサウェイ』第一弾。二弾目以降もベテラン作画の綱渡りを見届けつつ、コンポジットの妙味の深化と制作フローの新陳代謝を期待したい。

□各シーンで目を引いたのは、マンハンターの威嚇からそそくさと身を引くハサウェイの土産袋を伴ったリアクション(威嚇に慣れた雑多な交通と、乗り込んだタクシー内装が富野的なオネェ感)。ダバオ夜襲パートの、自失のギギを介抱するハサウェイの目先にいるマフティー組へギギを捨てて合流できないジレンマ(自失のギギの零度の描画が『人狼 JIN-ROH』的で、エメラルダとの対比でリアルなMS戦闘被災のなか寓話性がより際立つものとなっていた)。ΞG回収の為のマフティー海上ロケットの発射シークエンス(サンライズ×バンダイビジュアルのメカCGアニメの積み重ねの年月や、その関連作で度々演出でアプローチしてきた松尾衡の成果が色濃く出ている)。

■鑑賞後の後感が、ハサウェイ・ギギ・ケネスそれぞれの黄昏(ヴァケイション)がこれから続いていくところに重点が置かれ、年表の隙間をドラマで縫ってガンプラ売るよのUCスピンオフのパターンに嵌らない清々しいエゴが煌いていた。

□ギギ役の上田麗奈のハマり具合以上に「初恋を知った頃の理想」を数少ない場面で喚起させるメイス役の種崎敦美…⁉︎