放置感想 26台目『カウボーイビバップ』

■実写版『カウボーイビバップ』ネトフリ配信直前ということで、洒落たとは言い難い滑稽な実写PVがアニメのファンを不安にざわつかせている… アニメ放送から23年ということで、アニメの『ビバップ』の魅力を自分なりに整理して実写の不安から目を逸らしたい(え

□『ビバップ』の魅力、というか後のBONESアニメの魅力の核として、各話演出:武井良幸の撮影のこだわりがある。デジタル撮影の黎明とセルアニメーション撮影のピークの間で炸裂している1990年台末ならではのフレーバー。2000年初め頃にレンタルビデオのVHS画質で観てた時は『ビバップ』1話(武井演出)のブラッディ・アイ視点を表現するデジタル撮影が抜群の安定感があるセル撮影に差し込まれる違和感に戸惑っていたが、作画:鈴木典光 撮影:武井良幸コンビの「ちゃっぴぃ」によるEDアニメーションの軌跡を知っている現在では、技術的制約と成熟の間にあるデジタル撮影の趣向を楽しむことが出来るようになった(HD画質で気軽に見れるネトフリ)。武井コンテ演出の20話「道化師の鎮魂歌」23話「ブレイン・スクラッチ」は長尺のデジタル撮影が盛り込まれているが、当時のデジタル彩色等の技術的制約を、深夜に爆裂する空飛ぶ道化師やモニター越しの番組ザッピングに潜む映像ドラッグといった特異なシチュエーションで画を固めていくなかで鮮烈な色味を帯びる凄味。

■『ビバップ』の宇宙の闇に静謐なフロンティアが宿っていると感じるのは、アナログ撮影の闇と衛星放送の開拓とビデオテープの黒画面のノイズが、デジタル技術で統制される前の「入り混じった可能性」として(リマスターされたとしても)刻印されているからだ。4:3の本編画面の情景がLPレコードのジャケットのように収まっていくのが16:9のモニターで発見される『ビバップ』のヴィンテージ。

渡辺信一郎作品の「ブラックアウト」概念は「ロストジェネレーション」の「喪失」と「静謐なフロンティア」の「可能性」が入り混じっていて、『残響のテロル』は2014年の「ブラックアウト」のテーゼを、武井良幸撮影監督の『スペース☆ダンディ』は「ブラックアウト」のアンチテーゼ(2014年のアニメはブラック自体もアウトしてるじゃんよぅ。を豪華に雑多なベテランゲスト参加と明るい銀河によって…)を示していたのかも知れない(『ダンディ』監督の夏目真悟最新作『Sonny Boy』は2021年の「ブラックアウト」だった)。