放置感想28台目 アニメ『ゴルゴ13』(2008年版)の西澤晋回

□アニメ『ゴルゴ13』(2008年版)がネトフリにあったので、西澤晋 絵コンテ・演出・作画回を一通り観ていった。アニメ制作という火事場(西澤監督の『め組の大吾 火事場のバカヤロー』は必見‼︎)で土台となる絵コンテを切り続ける西澤氏。「アダルト」が死語になる前の洋画のムードを画に仕立てる迫力とこだわりが西澤『ゴルゴ』回にはある。

■西澤コンテ作画監督回のTarget.36「死に絶えた盛装」は、ルーレットで描写される時計回りに争う球の(反時計の)波乱の軌跡が風車やカーチェイスに反復され、ゴルゴが見えざるターゲットの正体を掴むと(客観では)時計回りのモナコGPで必然の狙撃が遂行されるコンテ構成の渋さが圧倒的な回。情事を窓越しの枝の揺れで奥ゆかしく見せたり、西澤劇画女体シルエットのアニメーションと窃視のゴルゴのギャップを看過する画面の緊張感の高さ、脳天を撃ち抜かれたターゲットの眼球描写の容赦のなさも見所。

□西澤コンテ演出作画監督回のTarget.41「ペチコートレーンの夜霧」と、西澤演出作画監督のTarget.46「世紀末ハリウッド」は西澤版『人狼 JIN-ROH』を想起させたり『め組の大吾』の火事場描写のフェティシズム(縦に落ちる水流とライティング、現場の車と人の密度等)が炸裂している。「ペチコートレーン」の肢体描写も西澤劇画ならではのソリッドさで、ガーターベルト着用のショーツ脱衣のアニメーションも見事(であるが、前カットでショーツ下履ガーター上履きで描画されてるので脱ぎ方矛盾するよなと思ったり)。下水道の縦に落ちる水流と光源描写は西澤氏ならではの着眼なのだなと。「世紀末ハリウッド」は『め組の大吾』で出来なかったスプリンクラー描写や、粉塵による乱流がダイナミックに描写されていて、良い火事場見たなとなること請け合いだ。

■西澤ゴルゴの画作りはシネマスコープで撮られた被写体のスケール感をおさえることで、ゴルゴが関わる世界の格式にリアリティが付加されるところに醍醐味がある(西澤コンテ演出原画のOP1はシネスコで撮られているゴルゴのスケールを余すことなく堪能できる)。