人の造りし理想郷(シャンバラ)で絢爛たる白昼夢を描き踊り続ける/『フラ・フラダンス』鑑賞メモ

水島精二総監督『フラ・フラダンス』。「ご当地アニメ」や「復興支援」といったアニメが現実と関わる方向性だけでなく、日々の積み重ねが復興を描く現実と共に、アニメーションの回復と過去・現在・未来を想い描く願いが込められた作品だ。アニメーションの回復、とは大袈裟な表現かもしれないが、水島監督の手描きアニメ前作『BEATLESS』の惨状を知る身としては『フラ・フラダンス』の静寂と情熱を兼ね備えた舞台と手描きとキャラクターCGアニメの誠実さに支えられた水島精二アニメの再興が嬉しかった。

□『フラ・フラダンス』は(フラに取り組むやぐちひろこキャラクターデザインの娘達をみて)実質『アイカツ!』とアニオタの人達がよく口にするが、もう一つの「アイカツ」こと水島監督の會川昇脚本アニメ活動で培われた、現実と幻想の接点を想い描く視点が『フラ・フラダンス』でも生かされている。令和の『コンクリート・レボルティオ 〜超人幻想〜』としての『フラ・フラダンス』。

■2年にも及ぶ福島とスパリゾートハワイアンズのロケハンから劇中の1年の巡りを描けるようになったのは『夏色キセキ』のことを思い出すと感慨深い(『UN-GO』制作中に下田ロケハンと『夏色キセキ』制作の綱渡りをしていた水島監督)。フォーシーズンのLIVEアニメを実現した、いついろディライト‼︎

□『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを往く者アルフォンス・エルリック(魂がフラフラ)の変奏としての主人公:夏凪日羽を、水島監督が『ジェネレイターガウル』で監督デビューした1998年生まれの福原遥が見事に寄り添っていた。日羽の姉、真理がエドワード・エルリックの位置付けになると思いきや、真理の同期で日羽の仕事の先輩 塩屋崎あやめが、真理の生前の思いを継ぎ「姐さん」として日羽を見守り続けた。あやめの引退を決めたステージの上で夏凪姉妹の名前に隠された「ひまわり」を日羽に託したシーン、TVの水島版『鋼』最終回のアルフォンスを「門」から連れ戻すエドの最後の錬成の構図とそっくりで涙腺が駄目押しされてしまった。

■日羽の同期の娘達のキャスティングを含めた凸凹具合が『大江戸ロケット』の長屋の喧騒を彷彿とさせて良かった(あやめや鈴懸にとっての真理はおソラさんだったんだよな、とか)。富田望生演じる滝川蘭子の関取ジョークと田舎弁の攻めた愛嬌。

スパリゾートハワイアンズ温水施設の「人の造りし理想郷(シャンバラ)」の見せ方が水島総監督 綿田慎也監督共にメカものの匙加減をピリっと効かせることで、無形のハワイの雰囲気を笑顔と共に運んでくるフラダンスが必要とされている感じが肌感覚でわかる。メイクの控え室や稽古場の鏡面描写の違和感のなさは映画の没入感を高めていた。

■老若男女の観客描写が場面毎に適度な密度感で描ききったのをみると、人々の帰還が示された『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の少し先の景色であってほしいと思った。

□スポットPVと本編のギャップが穏やかじゃない平和人の社内恋愛。編集の力を思い知ったよ…