放置感想30台目『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』

■『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(以下『エウレカ』)見終わった。完結編ブームの2021年で「変な映画」としてキャラが立ちすぎてざわざわしている。シリーズや予告編等でかき集めた見立てがあれよあれよと爆発四散するスピードについてこれるか(サプライズデューイ理論⁉︎)、正直置いてきぼりで館内の闇に漂うほかなかった…

□『エウレカ』が「変な映画」にならざるを得なかったのは「完全新作」の理想と現実を擦り合わせて完成に漕ぎ着けた結果と、「望まれない子供(続話)」をあの手この手で祝福してきたシリーズの矜持がなせる業だ。『エウレカ』で描かれた「望まれない子供」は、ポストエヴァ作品としての『ラーゼフォン』や、『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』等を難産してきたBONESアニメの歩みそのものでもある。

■デューイの過剰なチグハグさは『エウレカセブンAO』のトゥルースの奇行を軽く凌駕しており、最強の拒絶タイプとしてエウレカを幾度も吹き飛ばすスマブラのキャラとして振る舞う姿にニヤリとしてしまった(遺言のときもサプライズでエウレカを吹き飛ばす律儀さ)。ワンタッチ烈風斬とか口紅の強調をみると、レントンオルタというより魔女エウレカオルタ感がある。

□『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』もアスカの部屋着姿で『ストライクウィッチーズ』を擦っていたが、名塚佳織小清水亜美が居る『エウレカ』もまた入念に擦っていた。『ストライクウィッチーズ』の引用は『トップをねらえ!』の引用がより際立つアニメ史の知恵。

エウレカシリーズ完結編が「変な映画」で締めくくられることに不満がないわけではないが、京田知己監督の16年にも及ぶ軌跡で得たものは沢山あった。『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』から『エウレカセブンAO』での、青山真治監督『EUREKA(ユリイカ)』『Helpless』『サッド ヴァケイション』の「望まれない子供」達をテーマにした実写作品から、そのテーマをアニメ制作にアダプテーションした京田知己のシネフィルのアニメ労働者としての奮闘に感銘を受けたし、水島精二監督作品の咀嚼からの『ANEMONE』爆誕は忘れられない。

エウレカが終盤ビームス夫妻を「生きろ、とは言わん。死なんでくれ」したの、観た後でじわじわくるやつだ… (親子の家族を望んでいた男女が喪失に囚われ、気がつけば未曾有の厄災の片棒を担いでいて、その主犯の唯一の生き残りとして罰を受けることになる。アドロック関係者のままならない人生のリアル…)

■「フィクションと現実」の大融合に関しては来週公開の水島精二監督『フラ・フラダンス』が納得のいくかたちでフィルムに落とし込んでいるはずなので…