放置感想31台目 『86-エイティシックス-』から振り返る『未来のミライ』

石井俊匡TVシリーズ初監督作品『86』はA-1 Pictures制作アニメの2010年代総括をA-1の制作進行からキャリアを歩んだ石井監督が成そうとしている(『86』本編残り2話は2022年3月放送)。ワンオフの1クールアニメを(劇場アニメと並行しながら)作り続けたA-1の焼畑アニメ制作のなか生き残り「行けるところまでいく」姿勢を貫く石井監督の『86』は、劇中の戦場の徒花になるはずだった子供達の行く末と重なり目が離せない。

石井俊匡は『86』の監督以前に細田守監督『未来のミライ』で助監督して参加している。伊藤智彦監督『僕だけがいない街』で監督助手を務めた後の作品でもある『未来のミライ』は、『僕街』『86』の石井監督の制作スタイルを測るうえで興味深い要素が目につく。

■殊に、ひいじいじ(声:福山雅治)出演パートは『86』に繋がるメカニカル描写や手描き背景と3DCGで空間構築された背景動画が見所であり、ひいじいじがくんちゃんに語りかける台詞は『86』が石井監督にとって初の本格的なメカアクションアニメにも関わらず堂々とした仕上がりになった根幹が示されている。

《どんな乗り物だってコツは同じだに。一つ乗れたら何でも乗れるようになる。馬だって、船だって、飛行機だって》

『86』から『未来のミライ』を初見すると、ひいじいじ『86』のライデンそっくりじゃん(ひいじいじのイケメン系譜にあたるライデン)となるのも乙である。

□石井監督のキャリアのレールを密かに舗装している伊藤智彦監督(『僕街』での石井監督抜擢、細田守監督とのコネクションや、『86』での各話演出)は『86』劇中においてエルンスト暫定大統領として戯画されているのではないか(ギアーデ連邦≒CloverWorks)。