話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

■まずは話数単位10作品開示。無限の住人日本沈没2020はTVアニメとしてはレギュ違反なのだが、TVアニメをネトフリ等のサブスクや配信サービスで観ているのが殆どなので、WEBアニメもTVシリーズ形式ならTVアニメ10選の範囲内でいいのではと思う。

 

①『id:INVADED』FILE:03「SNIPED 滝の世界」

②『ソマリと森の神様』第1話「旅する親子」

③『無限の住人-IMMORTAL-』第二十幕「霏々─ひひ─」

④『宇崎ちゃんは遊びたい!』第10話「鳥取で遊びたい!」

⑤『日本沈没2020』第10話「ハジマリノアサ」

⑥『デカダンス』#12「decadence」

⑦『D4DJ First Mix』第5話「One and Only」

⑧『戦翼のシグルドリーヴァ』EPISODE5「館山基地合流遊撃隊」

⑨『体操ザムライ』第6話「親子ザムライ」

⑩『呪術廻戦』第13話「また明日」

 

□ここから各選解説。

①の『ID』3話は殺人者のイドの理、〈殺人者の「探偵」〉の意味が一話完結に凝縮されているところが良い。シリーズ全体的に精度が高いが、あおきえい監督による真下耕一アニメ(00年代のビクターエンターテインメントが活気があった頃の深夜アニメ)のリバイバルが興味深かった。

②の『ソマリ』1話は、安田賢司監督が演出テーマとする「手の描写」をガッツリやることが明快な、街の異種族描写。

③の『無限の住人』20話は、令和のTEXHNOLYZEな終盤の中で、奈良徹が演じる尸良の壮絶な粘着が焼き付いてしまった。

④の『宇崎ちゃん』10話は地域振興コラボ回ならではの景観描写がコロナ禍も相まって沁みてしまった。コラボ回以外のKADOKAWAアニメらしい低予算の中でも、上原秀明、増田俊彦のローテコンテ回が面白いところも良かった。

⑤の『日本沈没2020』10話は、正直「ジャンル的に人の生き死にに振り回されるの嫌だから最終回(結果)だけ確認しとくか」という惰性を許容する全話配信済を見越した上での、真剣な日本補完計画を繰り出された衝撃が凄まじかった。最終回から順不同で観ても問題ない作りは、YouTuberのカイトのスタンスがとりあえず保証するところがあり、どこからでも、とにかく見届けさせる姿勢がおそろしかった…

⑥の『デカダンス』最終回、クライマックスが(構成の説得力の甘さで)「勝手にやってろ」状態だった瀬古浩司脚本の『屍者の帝国』と似たような状態だが、今回は各人が各々「勝手をやる」様を見届ける幸福がある。『デカダンス』の企画当初は「ロボットと人間の共生」という凡庸な起点だったが、『モブサイコ100』以降「映像化映えする(とされている)」漫画原作をシステマティックに次々とアニメ脚本化する瀬古浩司にシリーズ構成・全話脚本を据えることにより、あらゆる状況が娯楽として回収される娯楽機構デカダンスとその輪廻に疑問という自我(バグ)を抱いてしまったカブラキの葛藤を描くことが同時に瀬古脚本アニメへのクリティークになる核となった。「いつの間にかシステマティックに量産されている瀬古脚本アニメ」というオタク的な疑問を立川譲監督が身をもって次の景色を作る様に、ネトフリ契約者としては頭の下がる思いなのであった(『デカダンス』はもちろん他の瀬古脚本アニメはネトフリであらかた網羅できてしまう)。

⑦の『D4DJ』5話は、承認稼ぎの大鳴門むにがDJ活動で知り合った渡月麗と友達になる(むにの幼馴染の愛本りんくが明石真秀と友達になったように)ことで4人のHappy Aroundが生誕する重要回。CGキャラのフェティシュに力を入れている本編で、今回むに主役ということもあり、感情を隠さない表情とストッキング越しの御御足が絶え間無く刺さるOnly回(古いアニメファンなので、むにちゃんに『カウボーイ・ビバップ』のフェイ・ヴァレンタインを重ねてしまうのであった)。

⑧の『しぐるり』5話は、お馬鹿な水着回の4話から引き続き大畑清隆コンテで、4話と対照的に止められない喪失の予感に満ちた視座の連続で締めた回だ。男子禁制のお風呂場、映画館、海鮮食堂、司令室、管制室と喪失の距離感を漂わせたレイアウトが容赦なく決まっていくなかで、駒込・アズズの困り顔とステップがアクセントになっている。

⑨の『体操ザムライ』6話は、伏線を生かすアプローチが持ち味の本編の軸となるホームドラマが意外な形で着弾炸裂する、玲ちゃんと自転車と色んな意味で飛んだBB回。

⑩の『呪術廻戦』は13話は、田中宏紀コンテ演出作画監督の充実した真人の寄生呪ぶりに目を奪われるが、ナナミンの領域展開(違)の過去描写と順平編エピローグの〆(「説教は後」を噛み締める順平の関係者達)が瀬古浩司脚本の持ち味を生かす方向性(ナナミンと虎杖の関係性は、『モブサイコ100』の霊幻とモブの「大人と子供」の延長線)なのが良かったのではないでしょうか。